フェノキシエタノールは、化粧品で広く使われている合成防腐剤です。
EUでは最大1%までの配合が許可されていますが、その使用にはさまざまな議論があります。
内分泌かく乱作用の疑いがあることから、批判の声も多く聞かれるこの成分。
「本当に危険なの?」「肌や赤ちゃんに悪影響はないの?」そんな疑問にお答えします。
フェノキシエタノールとは?
フェノキシエタノールは、合成防腐剤です。
クリームやファンデーション、日焼け止めなどの劣化を防ぐために使われ、細菌や微生物の増殖を抑える高い効果があります。
この成分は、「フェノール」と「エチレンオキシド」を高温・高圧で反応させるエトキシ化という化学的プロセスで製造されます。
フェノキシエタノールはどのくらい危険なの?
INCI Beautyの調査によれば、現在も約30%の化粧品に使用されています。
EUでは最大1%までの配合が許可されていますが、フランス国内では意見が分かれています。
- ANSM(医薬品安全庁)は2012年以降、使用に対して否定的な立場を取っており、
赤ちゃん用のおしりケア製品には完全禁止、3歳未満の子どもには0.4%以下に制限すべきと提言しています。 - 一方、FEBEA(化粧品業界団体)は「1%以下であれば安全」とする欧州の科学委員会の研究結果を根拠に、安全性を主張しています。
2022年12月には、ANSMの規制義務が取り消される判決が出され、業界側の主張が優勢となっています。
「カクテル効果」の懸念も
ANSMは、「製品1つでは問題なくても、複数の製品に含まれることで健康影響が出る可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
また、フェノキシ酢酸(分解物)が生殖能力に影響を与える可能性も指摘されており、内分泌かく乱作用の疑いも拭いきれていません。
肌と赤ちゃんへの影響は?
敏感肌や乳幼児には、アレルギー反応や肌トラブルを起こす可能性があるため、注意が必要です。
- 赤み、かゆみ、刺激、乾燥などのアレルギー症状のリスク
- 妊婦・授乳中の方・3歳未満の子どもは特に注意が必要
アメリカのFDA(食品医薬品局)も、授乳中の母親にはフェノキシエタノールを含む製品の使用を控えるよう勧告しています。
特に注意したいのが赤ちゃん用のウェットシートです。
以前は「フェノキシエタノール入り製品は3歳以下のおしりに使用不可」との表示が義務付けられていましたが、2022年12月以降はその表示義務も撤廃されています。
環境への影響は?
フェノキシエタノール自体は生分解性が高く、10日間で60%以上分解されるとされています。
しかしながら、製造工程が非常に環境負荷が高いのが問題点です。
- エトキシ化という化学プロセスは有害で、発がん性・環境毒性・高エネルギー消費が伴います。
- 水質汚染・土壌汚染にもつながるため、多くのオーガニック認証(Nature & Progrès など)では使用禁止となっています。
やさしいコスメでのフェノキシエタノールの評価は?
やさしいコスメでは、フェノキシエタノールはリスクのある成分として評価しています。
- 評価レベル:★★☆☆☆
- 理由:
- アレルギー反応や肌トラブルを起こす可能性があること
- 製造工程が非常に環境負荷が高いこと
- 生殖能力に影響を与える可能性や内分泌かく乱作用の疑いが指摘されていること
やさしいコスメでは、こうした成分に対して慎重な立場を取り、「避けた方がよい可能性がある成分」として警告表示することがあります。
5. フェノキシエタノールの代わりになる防腐剤は?
ナチュラル志向のブランドでは、以下のような代替防腐成分が使われています。
ソルビン酸カリウム(Potassium Sorbate)
→ 柔らかい防腐力/食品にも使われる/敏感肌向け
ベンジルアルコール(Benzyl Alcohol)
→ 自然由来でも合成でも製造可能/高濃度で刺激性に注意
グルコン酸クロルヘキシジン(Chlorhexidine Digluconate)
→ 抗菌効果が高い/肌への刺激に注意が必要
ナトリウムアニセート・ナトリウムレバウレート(天然由来ブレンド)
→ オーガニック処方で人気/低刺激性
まとめ
フェノキシエタノールは、安価で高機能な防腐剤である反面、肌やホルモンへの影響、環境負荷が懸念されている成分でもあります。
今後のトレンドは、よりナチュラルで低刺激な処方へ。
肌へのやさしさや環境配慮を重視する方には、フェノキシエタノールフリー製品の選択がおすすめです。
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